2001.7
柏から、新進気鋭のアーチスト誕生! 竹本真紀さんby=上野さくら 生まれてこのかた、〈アート〉という世界とは、およそ縁のない生活をしてきた。絵画とか芸術とかいう言葉を耳にしただけで〈苦手〉の2文字が頭の中を飛び交い、 妙にからだがひいてしまう。自分には表現することも理解することもできないと、頭 から思い込んでいたし、興味も持てないでいた。 けれど、昨年春、偶然通りかかった柏市民ギャラリーで目からうろこの〈アート〉 たちと出合ってしまった。その年19回目を迎えたという『柊(ひいらぎ)展』での 出来事だ。 会場には油絵やアクリル画、彫刻、工芸品、布を使った・・・・・など、個性あふ れる作品が展示されていた。そのジャンルは実にさまざま。けれど、どの作品にも若 さと才能と感性の豊かさがほとばしり、私の心にズンズンと迫ってくる。 なかでも、なぜか心惹かれたアーチストがひとり。アクリル画を中心とした作品を 展示した竹本真紀さんという女性だ。彼女の描く世界、抽象的な、それでいて心の内 面をぽっこり浮き彫りにしたような・・・。うまく表現できない自分がもどかしい が、とにもかくにも、その都会的センスと感性のみずみずしさに心を揺さぶられた。 そして、その感動を表現する言葉も持たないまま、用意されていた感想ノートに思わ ず文字を綴ったのだった。 |
「写真? 苦手なんですけれど・・・」 とはにかむ、真紀さん。 |
その竹本さんから今春、私のもとへ1枚のはがきが届いた。7月に開催するという 個展の案内状である。・・・真紀さんの作品に会える! 真紀さんは、青森県八戸市出身の24歳。新進気鋭のアーチストだ。弘前大学教育 学部在学中、美術を専攻し、油彩画を中心とした作品を制作してきたという。 「将来の進路を決めなければならないとき、本当に自分は何をやりたいんだろうかっ て・・・。教職という道もあったのですが、やはり作家として生きたいと芸術系の大 学院を受験したんです」と竹本さん。けれど、残念なことに受験は失敗。失意の中に も、芸術への夢は大きく膨らむばかりだったという。 そこで2年前の3月、夢を形にするべく、単身上京。柏市内に住まいを見つけ、専門 学校に通う日々。そして現在は、美術館関係のアルバイトをしながら、作品の制作活 動に力を注いでいる。 |
〈バースデー〉店内に飾られてる、真紀さんの作品『One Apple』 |
昨年秋には、ターナー色彩且蜊テの〈アクリルアワード2000〉に、みごと入 選。数多くの応募作品のなかでも「アクリル絵の具の多様な表現力を感じる作品」と 高く評価され、その将来性が期待されている。 一方、今年1月、東京都現代美術館で開催された「ギフト・オブ・ホープ〜2 1世紀アーチストの冒険」では、ヤノベケンジ企画〈ガチャポン・トンキチアート ・プロジェクト〉に参加。仲間とともに、ガチャポンと呼ばれる小さなカプセルに収 まるオリジナル作品320種を制作。新しい形の展覧会でたくさんオリジナル作品を 提供し、お客さんとのコラボレーションを楽しんだという。 真紀さんの思い描く作家とは、「自身のめざす高い芸術性へ常に挑戦し続ける 者」。生活のために絵を売る絵描きではなく、あくまで芸術家としての道を歩みたい という。「多くの人に評価されたいとか、大きな賞に入選したいとか・・・、あまり そういうふうには思わない」と、きわめてクールだ。 なるほど、彼女の素顔はその作品の印象とは対照的な、ごく普通の女の子。芸術家 を志す気負いは、まるで感じられない。「一流の芸術家である前に、人として1人前 でありたい・・・」。はにかみながらそう話す、彼女のピュアな横顔が印象的だ。 そんな真紀さんの個展〈TAKEMOTO MAKI 〜SWITCH〜〉が、7月1日から10日ま で、柏の寺嶋文化会館で開催される(入場無料。開館時間=9時〜21時。土日は1 7時まで)。豊かな感性で描き出された〈真紀ワールド〉、どんな世界を披露してく れるのか、今からとっても楽しみだ。21世紀、ミュージックシーンだけでなくアー トの世界でも、柏から世界へ、みずみずしい感性のアーチストを送り出したい。 *P.S* 真紀さんの作品は、柏駅東口の中古レコード店「バースデー」に常設されています。 また、次回「柊展」は7月10日〜14日。柏高島屋ステーションモール8F、柏市 民ギャラリーで開催されます(入場無料)。21世紀、柏のまちの文化を担う、新進気 鋭のアーチストたちに、あなたも会いに行きませんか? |
〈バースデー〉に、ビートルズを描いた作品も・・・ |