「こんな閑静な場所が柏駅のすぐ近くにあったんだ」というのが、UBSL(都市裏実験所)の活動拠点“ROOM”を訪れたときの第一印象だった。
UBSLとは、“URBAN BACK−SIDE LABORATORY”の略称。
昨年秋に「JOBAN アートライン柏」が開催した巨大アートイベントに参加した
東京藝術大学先端芸術表現科2年の学生たちが発足したプロジェクトである。
現在メンバーは3名で5月から順次作品展を開いているが、そのうちの一人、
高畠淳さんのオープン展示を取材するべく、柏駅東口の駅前通ハウディーモールの「市民活動センター」に向った。
センターの奥の扉を開けると、B館へと続く渡り廊下がある。
通りから一歩奥に入っただけなのに、そこには賑やかな通りとは打って変わって静かな空間があった。
B館1階にオープンスペース、そして2階の突きあたりに“ROOM”がある。
ROOMの入り口で、まず目に入ったのが白い砂。
その砂を踏んで良いものか躊躇していると、中にいた高畠さんが「どうぞ」と声をかけてくださった。
恐る恐る砂の上に立つと、それまで何もなかった白い砂の上に私の影が映り、
そこになんと「海」が出現した!入り口のスタンドライトの光と、部屋の別の角度から照射される映像の光が相殺されて、
影の中に海が出現する仕組みになっているらしい。「人が加わることで完成する作品なんです。」と高畠さん。
普通、「芸術鑑賞」というと、観客側は観るだけ・聴くだけという受身になってしまいがちだが、
ここでは自らも「作品」に参加することができるのである。
自分の影に打ち寄せる青い波と白い泡。眺めていると自分が海の中に漂っているかのような不思議な感覚にとらわれる。
「海は生命が誕生した場所。こうした都市の片隅で、現代に生きる人の影の中に海を映し出すことで、
僕なりの“神話”を表現したいと思っています。」と高畠さんが説明してくださった。
なるほど、確かに私たち人間の遠い祖先は、何十億年も昔に海から生まれた。
海は「太古の生命」と「現代の生命」をつなぐ存在なのである。
その海を、人の影を介して都市に出現させることで、時空を超えた“神話”が語られているということなのかもしれない。
ROOMには、他に、高畠さんが撮影した写真も展示されている。
「J U N T A K A B A T A K E ― U M I ―」は、7月28日(土)まで。
UBSL(都市裏実験所)では、「都市スペース(人の往来する場所)が何を可能にし、
人々の生活とどう関わっていくのか」をテーマにしているとのこと。
“都市空間”と“個”のはざまで、若手アーティストたちがどのような作品を生み出すのか、今後の活躍に期待したい。
URBAN BACK-SIDE LABORATORY(都市裏実験所)ホームページ
http://ubsl.web.fc2.com/