ご存じ?! 西口のゆかいな仲間たち
by=上野さくら
人間って、不思議!
もう何年も通っている会社や学校への道のり、いつも見慣れている「当たり前の風景」の中に、ある日突然、今まで全く気づかなかった「何か」を発見したりする。そんな経験って、ありませんか?
柏駅は県内屈指の乗降客を誇る、ビックステーション。
朝夕の混雑時には、JRや東武線の改札口から大勢の乗降客が吐き出され、人々はただ流れに沿って、黙々と会社への道のりを急ぐ。私もそんな時間帯には気が焦るだけ。もう何百回となく同じ場所を通っているのに、「彼ら」の存在に全く気づかなかった。
ところが先日、耳も凍りそうに寒いある日の午後、柏駅西口デッキの手すりの壁(?)に、何ともひょうきんな表情をした小さなお面が張り付いているのを見つけたのだ! ステーションモール入り口を出てすぐ、左側の銀の手すりの下にへんてこな顔が4つも!
おかめ、ひょっとこ、???。腰をかがめてよくよく見ると、ムムムム、彼らの鼻先やほっぺは剥げたり汚れたり、見たところずいぶん年季が入っている。なになに、小面の並びには「郷土玩具97’」と書かれたプレートが・・・。な〜るほど、彼らは4年前、今の西口デッキができた時からこうしてここに居並んで、道行く人を眺めていたんだ。なのに、私はただの一度も彼らの存在に気づかなかった! ん〜、なんだかとっても不思議な気分。
ところで、この小面、いったい西口デッキにいくつあると思います?
試しにデッキ全体をくまなく歩いてみると、ある、ある、目の前のエレベーター脇の階段や中央の二股階段付近、大和銀行前から駅南口に続く両脇の壁面にワイワイガヤガヤ。驚くほどたくさんの小面が居並んでいるではないか。その数なんと、85個!! みなさん、気がついていました?
そういえば、どこかで見かけたこの小面。昨年5月、市民ギャラリーで開催された「下総玩具の世界」展の、あのお面たちだ! そう気がついて、帰宅後すぐにパンフレットを探してみる。確かに、作者は「下総首人形」の松本節太郎さんだった。
松本さんは明治36年、東京下谷の生まれ。昭和20年、戦災に遭って柏に疎開し、以来柏の人となった。戦後の物のない頃、松本さんは裏山の粘土をとって手捻りし、即製のかまどで焼き、泥絵の具で彩色。十二支や七福神のユーモラスな表情の首人形を作っては、上野や浅草、亀戸天神などで売り歩く生活を続けてきたそうだ。97歳になった今でも、そんな手作りのぬくもりが伝わる人形たちを細々と作り続けているという。
展覧会の日、私は初めて出会ったユーモラスな表情の人形たちに魅せられて、思わず首振りの張り子人形「辰」を買い求めた。軽くて素朴な作り、和紙のザラザラ感と筆あとの残るぬくもりのある彩色。手のひらに乗せると、自然と懐かしさ、いとおしさが沸いてきて、心がほっこり温かくなる。「柏にもこんな民芸品を作る人がいたんだ〜」と思うと、なぜだかほっと、うれしくなる。
さて、そんな新発見をしてからというもの、西口デッキを通るたびに、小さなお面が気になって仕方ない。思わず足を止めてひとつひとつ眺めてみたり、行き過ぎる人たちが気づいているかどうか様子をうかがったり・・・、かなり怪しい女と化している。こんな私って、一体・・・?!
ところで、この西口デッキの小面たち、実は同じ顔がいくつかだぶっているんです。果たして、何種類の顔があるのでしょうか? 興味とお時間のある方は、ぜひぜひ、ご自身の目で確認してみてくださいね!
※現在、松本さんの作品を扱っているのは、西口のギャラリー・ヌーベル。小面の他、張り子の十二支、わらの束にゆかいな表情の顔がいくつもささった首人形などが並んでいる。 |