2002.5.28 


<庭野すみれの なんでもウオッチング>
母の日に「オヤジの応援団」フォークコンサートを聴く
     ギターと熱いメッセージに酔った2時間半

(記)庭野すみれ


 なにげなく新聞を見ていたら、「戦うオヤジの応援団」という文字が目に止まった。 「??」と、好奇心むくむく。なんでも全国のフオーク好きの男性たちが集まって、70 年代のフォークを中心に生ギターの音にこだわって、演奏するというのだ。よし、行って みようと即座に決めた。

 5月12日、会場のアミュゼ・クリスタルホールに向かう途中、柏そごう前のデッキで 花束を売る若者たちに出会い、「ああ、今日は母の日だったんだ」と気がついた。そんな ことも忘れ、しかも「オヤジ」を応援するコンサートに行こうとしている自分が、妙にお かしかった。

 

  

 午後1時ちょうど、進行役の山下さんの挨拶でスタート。はるばる兵庫県から参加のト ップバッター東田さんは、新柏駅のホームでつくったという「西へ向かう」をさわやかな 声で熱唱。「青年は東へ、わたしは西へむかう汽車を待つ・・・人生のおもしろさと不思 議さを、酒が教えてくれた・・」.<わあ、いいなあ、来てよかった>と、早くもフオー クの力をしっかり再認識。

 三重県から参加の和田さんは、ギターとカメラと娘の澪花(れいか)ちゃんをこよなく 愛する優しいお父さん。曲名も「澪花」というオリジナル。あ

  

こがれのライカをもじって 名づけたという。「かけがえのない宝、誰にも愛される娘になれよ」。な んと幸せな澪花ちゃん。きっと心やさしい女性に育つでしょうね。

 柏の「狩人」こと金井さんと勝山さんは、息の合ったデュオで、アリスの「冬の稲妻」 と「チャンピオン」を披露。うーん、アリスに負けていないぞ。染村さん、荒川さん、今 林さんの3人のブルーグラス(アメリカ民謡)は、これでもアマチュアかしらと思うほど のギターテクニックと美しいハーモニーだった。

  

 正木さんと中村さんは、ロシア民謡やベンチャーズなどのアレンジ曲を、高度なギター テクニックに乗せて、存分に酔わせてくれた。ギターを自在にあやつり、楽しく遊んでる という感じで、場内から何度も拍手が沸き起こった。

 この日の一番若い出演者・野田旭(あきら)君は、フォークの神様ともいわれる岡林 信康さんにあこがれ、プロを日指している。すでに吉祥寺などで野外ライブをこなし、コ ンテストでの受賞経験もある大阪うまれの25歳。青春の友情を若さいっぱい爆発させて さわやか。ルックスもgood!がんばってね。

 根本さんは、峠三吉の「原爆詩集」より、オリジナル曲「にんげんをかえせ」を熱唱。 いつ聞いても胸をえぐられる詩だ。歌ってくれてありがとうという気持ちでいっぱい。篠 島さんのオリジナル曲「武甲山」も、山を壊しつづける人間の身勝手さを力強く歌い上げ 、感動的だった。

 最後に登場の山下さんは、路上で物体のように見向きもされない一労務者の死を、切々 と歌って印象深かった。これはボブ・デイランの「労務者とは言え」という曲。舞台の山 下さんの背後には、歌い終ったメンバーのギターが、ずらりと並べられ、それが美しいシ ルエットになって、演出効果抜群。

 ただの演出と思っていたら、「ギターにいい音を聞かせて育てるのです」という山下さ んの言葉にハッ。つまり弾いたり、聞かせたりして振動をあたえることが、ギターにいい のだという。並べられたギターには、岡林さんや仲間の素晴らしい音を聞かせようという 意図もあったのだ。

 コンサートの中で何度も耳にした「マーティンのギター」という名称。フォークシンガ ーなら誰もがあこがれるアメリカはマーチィン社の機種とのこと。年代や素材などによっ ては数百万するものもあり、若い間は高嶺の花。ある程度の年齢になって、やっと手にい れた宝物のギター。それをいつくしみ、遊ぶ姿を見て、幸せな人たちだなと思った。

 それにしても「オヤジの応援団」とは?世話人の山下さんによれば、リストラや倒産 の憂き目にあい、社会でも家庭でもすっかり元気をなくした団塊の世代、かれらを何とか 勇気づけたいという意味からのネーミングだとか。彼らが青春時代を送った70年代はも のすごい熱気があった。あのエネルギーをもう一度という思いが込められている。

 今回で3回目というが、17組の出演者のなかには紅一点で頑張る金子さんの姿も。皆 さんそれぞれ素晴らしかったが、これはフォークもギターも詳しくはない庭野すみれの、 見たまま聞いたままの感想である。2部は岡林信康さんのコンサートだったが、1部の余 韻を持ち帰りたくて、あえて聞かずに帰ってきた。ちょっと後ろ髪ひかれたが‥。