2003.7.10
<庭野すみれの なんでもウオッチング> <柏市 男女共同参画シンポジウム>に参加して 目からウロコの基調講演 (6月28日 主催:シンポジウム実行委員会/柏市)
「男女が平等に暮らしていけるまち」を目指して、柏市でも男女参画室が設けられ、 平等実現のための情報提供や生活相談など、いろんな取り組みがなされている。今回 のシンポジウムは、辛淑玉(しん・すご)さんのお話が聴けるということと、「10 年後のあなたは輝いていますか」というキャッチコピーに惹かれ、参加してみた。 まず、柏を拠点に活動する和太鼓のグループ「呼魂(こだま)太鼓」の勇壮華麗 な演奏に続き、柏市の助役・松尾恵美子さんが「女性が大臣や知事になっても珍しく ない世の中にならねば」と、挨拶された。
やがて、黄色の鮮やかなジャケットを着込んだ辛さんが颯爽と登場。舞台映えのする 堂々たる体躯に思わず感嘆の声。「今日はじめてナマの私を見た人は?」「いくつに 見えますか?」と、いう問いかけに始まり、あっという間に辛さんペースで場内がひ とつになっていった。 全国津々浦々で、ビジネスマンやオーナー向けの研修を行っている辛さんは、このと
ころ劇的な変化を感じていると言う。そのひとつがなんといっても女性の意識が大き
く変わり、元気になったこと。一方で男性の意識は旧態依然として夫婦や若い男女の
間でも、大きなギャップがある その例として、結婚歴20年以上の男女へのアンケート結果をあげられた。夫が妻に 望むことの第一が「尊敬されたい」。妻が夫に望むことの第一は「愛とお金」と具体 的。それに夫たちは「妻は夫婦いっしょに旅行がしたいというのが一番の願いではな いか」と、いささか哀れで的外れな予想を抱いているというのである。もはや世の多 くの妻たちが世話のやける夫よりも、女同士の気楽な旅を選択しているというのにで ある。 もちろんカップルで仲むつまじく旅を楽しめればそれに越したことはない。しかし旅 先でも小言が多く、家庭の延長のように横暴だったりして、「もう二度と行きたくな い」という声を聞くのも事実だ。 もう一例は、テレビ番組のなかで若い男性タレントが自分の恋人像について、派手な 服装はさせないとかバージンであってほしいとか、とても古風な考えを述べた時のこ と。それに対してそれぞれ40代、50代、60代の女性が示したという反応がおも しろかった。 「この子バカじゃない?」「女を支配したいのよ」。極めつけは「この子の父親はな にをしとるんやろ?」。あきらかに今までの日本にはなかった発想で、そこに居合わ せた辛さんは、感慨深いものを感じたという。 女性側からの人生相談も、50代、60代の熟年女性から「無口な夫で食事の時はま るで通夜のよう、この異邦人のような夫と離婚できるか」といった、今までになかっ たものが、どんどん出てきている。 小学校でも活発に質問してくるのは女の子ばかりで、男の子はおおむね黙っているそ うだ。その背景には「男はペラペラしゃべるものではない」「男なら泣くな」。父親 が出張すると「代わりにお前がしっかり家を守れ」と、三歳にしていわれてしまう現 実がある。 生きてゆくのに最も大切な感情表現を奪われ、ひたすら「負けるな、泣くな、やり返 せ」と、理不尽な育てられ方してきたため、家庭や学校、職場の重圧でこわれてゆく のは、圧倒的に男性が多いという。しかし、そうはいうものの家庭も社会も女の我慢 と犠牲の上に成り立っているものが、まだまだ多い。 今の中学生はほとんど父親と口をきかないというが、ヨレヨレになるまで外で働い て、家事労働がせいぜいゴミ出しであったり、育児にかかわる時間が極端に少ない現 実を見れば、当然の結果かもしれない。 夫婦の会話たるや一日平均5分で、食事時間を入れても30分弱。内容といえば「メ シ風呂、寝る」「ビール、箸、皿」などの業務連絡まがいの常用三単語で、先進国で 最下位だそうだ。「愛なんていくらでも表現可能なのに、思いを表現できないように 育てられてしまった」と、辛さんは指摘する。 とりわけ「戦争でいちばん傷つくのは女、子供とよくいわれるけれど、戦争にゆく 男たちは傷つかないとでもいうのでしょうか?」という辛さんの問いかけには、ハッ と胸を突かれた。 男に男らしさを押しつけたと同時に、女にも「そんなことでは嫁にいけないぞ」と か、「女は一歩さがって」とか、女らしさを押しつけてきた社会がある。「<らし さ>というレッテルは、本来あるべき姿を奪ってしまう危険があります」と、辛さ ん。 いまや人生80年の時代、辛さん手作りの「人生早見表」によると、今の45歳は昔 の25歳にしかならない。私たちの中に染み付いてしまった「らしさ」の概念は一朝 一夕にはきえないだろうが、頭が昔のままではどうにもならない。 辛さんのお話は、どれも具体的でわかりやすかった。お互いにきっちりした「言葉」 を持たなくては、家庭の平和も世界の平和もあり得ないということ。この当たり前の ような事実に改めて目からウロコが落ちたような思いがした。 その後の分科会は、第一「祭りと太鼓と男と女」、第二「女性の働き方、 知ってお きたい法律や税金の知識など」、第三「「ビデオとトーク 世界の女性たち、そして 日本のあなたは?」、第四「英語でワークショップ<Power Shuffl e>」、第五「調理実習トーク<男の料理〜手軽にできる西洋料理>」の5つに分か れての学習。
このなかの第三分科会にでてみたが、まず21か国の女性プロデューサーによる「開 発・平等・平和」をテーマにした5分間のビデオのなかから、インド、カナダ、コロ ンビア、ドイツ、フィンランド、ザンビアなど、6本を選んで観た。 いずこの国も女は似たような苦悩を背負って生きているのだなという感を強くした。 なかでも自由でよりよい人生を歩かせるために、女の子を男として育てるインドの母 親の姿には、衝撃をうけた。ビデオのなかの女性たちは、生き生きと自分らしく生き るために、国へ働きかけ、自分自身を鼓舞しながらたくましく生きていた。 その後、ドイツ問題に詳しい川村学園女子大学教員・柚木理子さんから、世界の国々 と比較しながら、日本の現状について聴いた。さまざまな統計から、日本は人的投資 をしていながら、それを活かしきれていないことなど、多くの問題点が見えてきた。 この日は辛さんに活を入れられ、分科会で世界の具体例を学ぶという中身の濃い一日 であった。さて、10年後の私は輝いていられるか? 会場を後にする参加者たちの 背筋が、心なしかシャンと伸びていたような気がしたのだが。 |