2003.9.17

<庭野すみれの なんでもウオッチング>

モンゴルの蒼い風に乗って
ホーミーと馬頭琴コンサート
(記)庭野すみれ
 一つの口で二つの音を奏でるホーミー。耳をすますと、たしかに低音と高温が重なっ て聞こえるなんとも不思議な音だ。このホーミーと馬頭琴のコンサートが、8月30 日、柏のスタジオ・ウーでおこなわれた。

 ホーミーを聴かせてくれたのは、意外にも岩手県出身の梅木秀徳という日本の青年 だった。7年ほどまえ、テレビでホーミーを聴き、「これが人間の声か」と、衝撃を うけたという。そのご単身モンゴルに渡り、本格的に技術を学んだ。

 指導をしてくれたホドスーレン先生は、「君はノドボトケが二つあるし、アゴのかた ちもなかなかいい、将来がたのしみだ」と励まし、とくべつに面倒を見てくれた。そ して、今ではモンゴルホーミー協会認定歌手として、演奏活動を行っている。
モンゴルホーミー協会認定歌手・梅木秀徳さん
 このホーミーは、右脳を刺激してアルファー波を出させるのだと聞いた。 たしかに目 をつぶって聴いていると、モンゴルの大草原を吹き渡ってくる風の音にも似て、心地 いい。

 モンゴルから1500キロ離れたホーミー発祥の地・チャンドマ村では大人から子ど もまで、ホーミーを歌っているという。もともと風や動物の音を真似したことから始 まったらしく、家の中の悪を追い出してくれる崇高なものとされている。

 馬頭琴奏者・センジャーさんは、中国の内モンゴル自治区出身で、3年前に来日し、 市川日本語学校で学び、現在は大東文化大の大学院に学んでいる。美しい民族衣装 をつけたセンジャーさんと梅木さんが並ぶと、センジャーさんの方が日本人のよう だ。まさに「アジアはひとつ」 という感じを強くもった。
馬頭琴奏者・センジャーさん
 センジャーさんによると、馬頭琴は1000年の歴史を持ち、楽器の先が馬頭の形に なったのは、60年くらい前だそうで、そう古くはない。弓は馬の尻尾、弦は尻尾や ナイロンで作られているという。

 もともとは、来客や家族のために演奏し、一日の疲れを癒したのだとも。日本でも おなじみの童話「スーホーの白い馬」や、日本の「ふるさと」[竹田の子守唄」な ど、梅木さんとともに20曲あまりを演奏し、私たちをモンゴル高原へといざなって くれた。

 ところで、この会を主催した[モンゴルの蒼い風」は、モンゴルの雪害を救援しよう と、青山茂さんのよびかけで7時間40分におよぶ映画[遊牧」を上映したのをきっ かけに結成された。これは遊牧民の生活を1年以上にわたって追ったドキュメンタ リーで、大きな反響をよんだ。

 今年7月、映画の収益金を持って、代表の古谷遥生さんほか、谷口正子、松尾博義、 大渡英子さんの4人でモンゴルを訪れ、40所帯あまりのゲルを一軒一軒回って、直 接手渡したという。 [雄大な自然や、よく働く子ども達の姿、その瞳の美しさ、す べてが感動で、物なんかいらないと思いました」と、大渡さん。

 このところ、力士の朝青龍の活躍などで、モンゴルと日本はすごく近い国になった。 二人の演奏と、決して達者とはいえないトークを聞きながら、心が清められたと同時 に、素晴らしい国際交流の形を見た思いである。

 国が違っても、人間ってこんなに仲良く出来るのに、どこかの国では、相変わらず愚 かな争いをやっている。なぜ? どうして? まったく情けない人間ども! あっ 私も人間だった・・・。