2003.10.15
松本節太郎さんの作品は、柏駅西口デッキの壁面を飾る愉快なお面たちでもおなじみだ。
私が初めて作品を拝見したのは、90歳記念の個展の時である。
原色を使った強烈な色彩と、自由奔放な作風は、私たち見るものを惹きつけてやまな
かった。けれど、そのときの松本さんは、身の置き所がないといった風に恥ずかしげ
で、小柄な体がいっそう小さくみえた。 作品のなかに、ワラ束にいくつもの頭部だけを刺した「下総首人形」というのがあっ た。一つとして同じ顔はなく、どれもこれもがじつに個性的で、見飽きない。どうし ても欲しくなり、注文すると、[気ままに作っているので、いつになるかわかりませ ん」といわれた。それから待ちに待って我が家に届いたのは、なんと2年近く経って からであった。 松本さんは1903年(明治36)、東京下谷で染物屋の四男として生まれ、戦災で 柏に疎開。戦後の貧しい生活のなかから、ふと人形づくりを思い立ち、裏山の粘 土を材料に手ひねりし、自家製のかまどで焼き、泥絵具で彩色した。 | |
ファンのKさんと松本節太郎さん | |
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そして焼きあがった十二支や七福神の首人形をリュックにつめては、上野の松坂屋前
や浅草、亀戸天神、明治神宮境内などで販売した。少しずつ売れはしても、暮らしは
なかなか楽にならず、ランプでの生活が戦後9年あまりも続いたという。 だが、[郷土玩具作者」などと、世間にもてはやされることを好まず、無欲に玩具づ くり一筋に生きてきた松本さんは、ついに1988年、第1回ヌーベル文化賞を受 賞。この賞は、地域の文化向上に貢献した人に与えられるもので、ギャラリーヌーベ ル社長の鈴木昇さんによって創設されたものである。 |
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この受賞を機にギャラリーヌーベルとの縁が深まり、今年の100歳を記念して、
同ギャラリーの2階和室に常設資料室がオープンした。「私には後継者もな
く、私一代限り、下総玩具を託すので、大切にしてほしい」との意向を受けての開設
である。 その資料室を訪ねると、500点あまりの作品が、棚、壁、天井にいたるまで、ぎっ しりと並んでおり、「わぁ〜、これは、これは」と、圧倒される。ダルマ、お面、か わいい干支の動物たち、雛人形、姉様人形、張子のトラや天狗、どれもなんとも言えな 愛嬌があり、知らず知らず顔がほころんでくる。 |
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下総玩具の魅力は、郷愁をかきたてる圧倒的な素朴さにある。松本さん自身も作りな
がら、さぞや楽しかっただろうなと思えるものばかりだ。これからも長く、いろんな
人に愛されていくに違いない。資料室の入り口には、店主による次の文が掲示して
あった。 |
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柏にこんな人が居るの 知っていましたか! 100歳だから凄いのではありません 100歳からやりたい事が沢山あり 遊んでいる100歳だから凄いのです あなたは100歳から何をしたいですか 長生きの秘訣は 贅沢をしない 人に会わない 無為自然 人は何歳までやりたいことができるのか 子供の玩具が大人の玩具になりつつある作品 そんな一人の郷土玩具作家の資料室です 店主敬白 <メモ> ギャラリーヌーベル所在地 千葉県柏市旭町4−7−1 TEL 04-7146-6800 (定休日・水曜) |