彼は一瞬にして、その舞いで空間を支配した。山海塾で活動する蝉丸のソロ公演である。
いつも見慣れたWUUの会場だが、公演では中央に一段と高い4畳広さの台、
そしてその上を樹木が曲がりくねる。蝉丸は、ロウソクを手にしてゆっくりと登場した。 真っ白な体にふわりとした白い 透明な衣装が、見るものを抽象的な世界に誘い込む。コンピュータ音楽の金属 音が静かに流れると、その体は何かを探すようにして空間を切り刻んでゆく。と ても孤独な世界に、幼児が迷いこんでしまったのだろうか。やがて、音楽が止む と静寂な世界が訪れる。踊りながら発する足を擦る音、衣が擦れる音が美しい。 |
曲がりくねる木の根元に小さな水場がある。その横にろうそくが置かれる。
蝉丸の舞は、即興的に彼の感性のおもむくままに、「からだ」として、より強い
表現性を持ち始める。 舞いとしての「からだ」は、苦悶し悩み苦しみながら、少しずつであるが解放さ れていく。舞台が最後に近づくと、一定のリズムを刻むパーカッション、ドラム、 そして人の息を想わすような音楽が入る。柔らかな暖かい照明が初めて舞台 を照らす。 |
音楽や絵がそれぞれ、我々の感性を刺激する場所が異なるのと同じように、
舞いはまた違った感性で見るものの心を打つ。ただ、残念ながらこのような舞い
を見る機会は本当に少ないから、見るものは戸惑い、またより大きな驚きを得
ることになる。 柏で山海塾で活躍する蝉丸の企画が持たれたことの意義は大きい。 スタジオWUUは、この小さな街で貴重な実験を積み重ねている。 |